今、韓国で進む日本食ブーム

1.はじめに

私は、2025年2月から韓国に10ヶ月間留学しています。実際に韓国で生活していて感じたことは日本食のお店の多さです。私が住んでいるホンデエリアだけでもneverマップで検索するとこのようにたくさんの日本食店ができてきます。実際に訪ねてみたお店では、韓国人のお客さんがほとんどでした。そこで私はなぜ今韓国で日本食のお店がこのようにたくさんあるのかという疑問を持つようになりました。このことから、韓国における日本食のお店増加、韓国人に愛されるようになった日本食についてより深く調査していきます。

 

2.背景

 かつての韓国は、日本による植民地支配の歴史を背景に日本の大衆文化に受け入れを制限していました。しかし、19998年10月8日に日本の当時の小渕恵三首相と韓国の金大中大統領が発表した日韓共同宣言に基づいて、同年10月20日に金大中政権はこれまで日本の映画や漫画といった大衆文化の流入を規制していた日本大衆文化の段階的な開放を始めました。第1弾の開放は1998年にまず全ての日本漫画と、映画分野ではカンヌやベネチアなど世界4大映画祭の受賞作品に限って解禁されました。第2弾の開放は1999年に世界83の国際映画祭受賞作品にまで拡大しました。2000年の第3次開放で対象の映画がさらに広がり、一部のゲームや日本語の歌詞がない音楽CD、スポーツやドキュメンタリーのテレビ番組も解禁されました。第4次の2004年に、全ての映画や音楽、ゲームが開放されました。この文化開放によって、日本のドラマ・雑誌・ファッションだけでなく、「食」もまた日本文化の一部として韓国へ流入していきました。2000年代以降、韓国で“日式”と呼ばれる日本風外食は、高級イメージの強い寿司や本格ラーメンから出発しつつ、2010年代後半〜2020年代にかけてカレー、丼物、トンカツの専門店、そして居酒屋へと広がりました。

 

 

3.日本食店が増える理由

 統計庁・国税庁の資料によれば、韓国の日本食専門店の数は2006年に5267店だったのが、2022年12月には2万1553店と、4倍以上に増えました。日本食専門店の増加率は韓国料理、中華料理、洋食と比較してもいちばん高い増加率になっています。外食業界では、日本を訪れる韓国人がとても多く増えたのが、いちばん大きな理由とみています。日本で経験した食事と雰囲気を韓国でも感じたがる人が、日本風飲食店を訪れるようになったとみています。日本政府観光局(JNTO)の統計では、実際に日本を訪れる韓国観光客は2014年の228万人から2017年には659万人と約3倍に増えました。日本風の飲食店を訪れるのは、主に20~30代の若い世代です。20代~30代の若い世代は初めての海外旅行を日本に行くケースが多く、旅行に行っても日本のあちこちの美味しい店を訪ねることが多いことが分かっています。さらに、SNSをきっかけに、日本の食文化への関心が広がっていっています。 InstagramやTikTokでは、「#일본감성(日本感性)」「#라멘맛집(ラーメン名店)」といったタグで日本旅行中の食事写真や動画が次々と拡散されています。韓国の食品栄養学会誌(長進阿 2023)は、SNS利用が外食行動に与える影響について「写真共有が食の選択動機を刺激する」と指摘しており、SNSで見た“日本の味”を再現した店が若者の間で人気となっている要因と考えることができます。加えてに、韓国社会に根付いた「一人外食(혼밥)」文化も日本食店増加への追い風となりました。朝鮮日報の記事によると1人で食事をする人の割合は5年前の2020年に比べ、朝食は38.8%から41.7%に、昼食は25.5%から26.9%に、夕食は23.2%から25.7%にそれぞれ増えました。これにより、カウンター席中心のラーメン屋さんやどんぶり専門店が気軽に入れる場所として受け入れられるようになったと考えられています。こうした生活スタイルの変化も日本食の需要を押し上げています。

 

 

4.実際に現地に住んでみて

 私が実際に韓国現地に住んでみてホンデエリアを歩いていく中ではじめに述べたように日本食屋さんを頻繁に見かけます。日本語の文字で看板が書かれていたり、お店の建物の外見が日本風の造りになっていたりと目に留まることがよくあります。この中で、私が実際に行って美味しかったお店を紹介します。1つ目は、「博田中」です。このお店は、和食の定食屋さんです。常にお店の中はお客さんがいっぱいで人気のお店です。私も何回か訪問しましたが、味も定番の日本料理でとても美味しいお店でした。特に白米の味が炊き立てでとても美味しく日本の味を感じることができました。写真にもあるようにからあげ定食がとてもオススメです。私がご飯を食べに行くたびに、日本人のお客さんはもちろん韓国人のお客さんもたくさん食べに来ていてやはり韓国人に日本食が人気であることが分かりました。

 

 

2つ目は、信や天やというお店です。このお店は天ぷらやうどんが名物のお店です。天ぷらのカリカリサクサク感がこのお店ならではの味で食べ応えがある料理でした。弘益大学に通っている学生もお昼ご飯に食べに来たりしていて現地の韓国人にも好まれるお店です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他にも、ホンデエリアにはたくさんのラーメン屋さんがあります。豚骨ラーメンや醬油ラーメン、二郎系ラーメン等さまざまなジャンルの味のラーメン屋さんが揃っています。私が訪れたことのあるラーメン屋さんも外で待機列ができているほどでした。先ほどリサーチで述べた通り、韓国人に日本食が人気になっていることが確かに分かりました。最近では、日本の有名な居酒屋チェーン店である鳥貴族がホンデエリアに2024年にオープンし、現在では3店舗にまで展開されています。韓国人の友達と話したり遊びに行く時に、日本食屋さんに行くことがよくありました。みんな味が美味しいと言いながら食べていて私まで嬉しい気持ちになりました。

 

 

5.今後の展望

 ここまで述べてきたように韓国における日本食の進出は2000年代の日本大衆文化の開放によりどんどん進んでいきました。また、日本旅行を訪れる韓国人の増加やSNSの普及により、日本食がさらに韓国人の間に浸透していったと考えられます。この日本食の人気は、一時的なブームに過ぎずこれからも変わらず人気があると考えます。KPOPなどエンターテインメントによる日韓の交流が盛んなだけでなく食文化を通しても日韓の文化交流を深めていくことができると思います。、食文化が日常的な交流の架け橋となり、相互理解を促す大きな役割を果たすと考えられます。韓国に暮らす留学生として、こうした変化を肌で感じながら、今後も日韓の食文化交流を見つめていきたいと思います。

 

 

参考文献